ティードリオス ~わが君にこの愛を~
「あ、じゃあさ、写真だけ!」
 ミーディスが言う。
「……は?」

「写真撮らせてくれ! え~と、ジャケットだけでいい、上半身だけ! かっこよく決めてくれ」
「……何で?」
「あ、ずるい」

 カメラ――それも、かなり本格的なものが出てくる。

「メディアに売るつもりよ」
「……何で?」

 訝しげに問うた洸流に、コレックが、
「さっき、こいつが言ったでしょ? 青き流星ラインハルトを駆り、王子を守ったナイトって。……いや、あの王家の未確認新型もニュースになってるけど、あんたも結構なものなのよ」

 どうやら、第九期に彼女が乗っていたとは夢にも思わないらしい。当然だし、その方がありがたいが。

「撮らせてくれないなら、今までのプライベートショットを持っていくわよ」
 夜月はミーディスの味方らしい。嘆息し、

「……分かった。一枚だけよ」
 言い、軍服のジャケットを羽織る。髪はポニーテールにした。
「ちょっと、それ……!」
 今まで黙っていた最後の一人――フォーセットが声を上げる。彼女の騎士章を指している。

 真新しく、騎士の証の他に、杖と翼が彫り込まれていた。

「せ、聖騎士……!」
「叙勲は後片付けが終わってからよ」

「こ、国王陛下から?」
 コレットの言葉に、首を横に振り、
「ティオ殿下から」
 四人は騒いだ。

「ティ……ティオ殿下? ティオ殿下?」

「何だ、その呼び方は?」

「ちょっと、どういう関係よ? そんなに? そんなに?」

「う、嘘だ、うそだー!」

 事実、彼女を最初にラインハルトに乗せたのも、第九期の搭乗者に推したのも、そして聖騎士叙勲を決めたのもティードリオスだ。感謝してもしきれない。

 と、フォーセットが出て行った。

「……?
 ほら、あんたらもさっさと写真撮って帰って。眠いんだから」
「え、え~と、叙勲の話は?」
「調べてみれば? もう王室から発表されてるわよ」
 だから、言ったのだが。ティードリオスの名の下だということも、少し調べれば分かる。

「……はい。分かりました」
 三人は、素直に頷いた。



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