ティードリオス ~わが君にこの愛を~
「洸流! 洸流!」
彼は、一人叫んでいた。
一日。意を決して女子寮を訪れた彼を待っていたのは、無人の部屋だった。留守ではない。表札は消され、荷物――パソコンぐらいだが――もない。
「そんな……洸流!」
「あれ? サルトじゃない」
声に振り向けば、コレット。通りがかり、といった様子だ。
「洸流……洸流は!?」
「何言ってんの? 配置換えになったじゃない。王城に。
もしかして、何も聞いてない?」
「そんな……僕には何も……」
「忙しかったからね。それより、もう中継始まってるわよ。うちで見る?」
「……え? 何の……?」
絶望に打ちひしがれながらついていくと、テレビに、王城の一間だろう。立派なホールが映っていた。
「あ……洸流……?」
騎士の正装とは違った衣装に身を包んだ洸流が、跪いていた。彼女の剣を受け取り、儀式を行うのは――
崇拝の対象が、畏怖してきた相手が。初めて、憎く思えた。
澄ました、整った顔も、優しげな翠の瞳も、何もかも気に入らない。
彼――サルト・フォーセットは、臣下にあるまじき視線で、テレビに映った王子を睨めつけていた。
◇◆◇◆◇
彼は、一人叫んでいた。
一日。意を決して女子寮を訪れた彼を待っていたのは、無人の部屋だった。留守ではない。表札は消され、荷物――パソコンぐらいだが――もない。
「そんな……洸流!」
「あれ? サルトじゃない」
声に振り向けば、コレット。通りがかり、といった様子だ。
「洸流……洸流は!?」
「何言ってんの? 配置換えになったじゃない。王城に。
もしかして、何も聞いてない?」
「そんな……僕には何も……」
「忙しかったからね。それより、もう中継始まってるわよ。うちで見る?」
「……え? 何の……?」
絶望に打ちひしがれながらついていくと、テレビに、王城の一間だろう。立派なホールが映っていた。
「あ……洸流……?」
騎士の正装とは違った衣装に身を包んだ洸流が、跪いていた。彼女の剣を受け取り、儀式を行うのは――
崇拝の対象が、畏怖してきた相手が。初めて、憎く思えた。
澄ました、整った顔も、優しげな翠の瞳も、何もかも気に入らない。
彼――サルト・フォーセットは、臣下にあるまじき視線で、テレビに映った王子を睨めつけていた。
◇◆◇◆◇