ティードリオス ~わが君にこの愛を~
「洸流……洸流……どうして……」
 返事は、来ない。電話も、メールも、手紙も。

 会いに行きたかったが、相手は王城の中だ。一騎士の彼には、入ることも敵わない。

「畜生……ちくしょう……洸流……」

 栗色の髪を編みながら、彼女が微笑む写真――隠し撮りしたものだが――を、見つめる。
 ディスプレイには、もう何通目になるかも忘れた、メールの下書きがある。

「……洸流……」
 ふと、彼の目に、別の名前が入った。ディスプレイの隅。

 ――リリア・フォーセット。


◇◆◇◆◇



「お待たせしました。確かに、ミルドレイン王女のご命令と確認できました。こちらへ」
 貴族の正装に身を包んだ彼は、王城の門をくぐった。



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