ティードリオス ~わが君にこの愛を~
王太子動乱
帝国歴四五九六年。およそ二〇〇年前に最後の王の杖の崩壊と引き換えにオーヴェルト帝国より独立した新生フェルキンド王国。その国で、内乱が起きた。
無能と揶揄された王太子。それに代わって国を支えてきた第一王女ミルドレイン。
自らが政治を執れない状況を不満に思ったか、王太子は突如、第一王女の廃嫡を求めて行動を起こした。無論、王女の信望は厚かったが、一度は準王命である王太子の命の下、軍は動いた。
王女は一度は王城を追われ、王太子への協力を拒んだ第二王子も、王太子の軍に追われる身となった。
フェルキンドは、独自に開発した、人型装甲兵器・ヴィーセンタによってその地位を確立した新興の軍事大国。嘗ては大国オーヴェルトの属国であったが、ヴィーセンタの台頭以来、その見解は改められた。ヴィーセンタは、現在のところフェルキンドの専売特許であり、その事実は今や別のことを示していた。
――王太子の王軍と、王女の正規軍。
この内乱は、世界最強の兵器の、ぶつかり合いだど。
ヴィーセンタ同士の騒乱。それは、フェルキンドの歴史は勿論、世界でも初の事態だった。
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