ティードリオス ~わが君にこの愛を~

「――第九期はどうなっている?」
 ティードリオスと洸流。その二人がミルドレインの執務室に入るなり、彼女はそう切り出した。既に人払いは終わっている。

 前置きも無く、緊迫した表情。

「間もなく、再調整プログラムが完成します」
「急いでくれ。明後日には動かせるか?」

「……どうかなさいましたか?」
 ミルドレインの剣幕に押されながらも、ティードリオスが尋ねる。彼女は、美しい顔を歪ませると、

「先の兄上の騒ぎで、コーレックが一機、行方不明になっている」
 二人とも、息を呑んだ。

「残骸に不自然な箇所があったので調べさせていた。まさかとは思ったんだが……」
 言いながら、ファイルとディスクを二人に渡す。

「他国に流れた可能性も否めない。その時は……機密の保持を最優先とする。
 ――第九期の準備を」

「了解しました」
「イレ・ルーヴュ・テオ」

 挨拶を交わすと、いつもの雑務を部下に任せ、二人はすぐに地下に向かった。
 ――ガレーネル・テューバッタ。

 フェルキンド王国とファイクリッド王家に殉じた、その名を思い出しながら。



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