ティードリオス ~わが君にこの愛を~
ヴィーセンタは、国外に派遣されない。
それは、その特性から出た結果だった。他国を凌駕し、フェルキンドの地位を確立した兵器。その独自性は卓越し、構造・基礎理論全てが国家機密だ。仮令残骸でも、立派な情報流出源となる。
機密が洩れればどうなるか――独立から間もない小国を軍事大国に成した兵器だ。考えるまでもない。
12年前、ヴィーセンタの機密が漏洩しかけたことがあった。当時最新鋭だった軍艦が奪取されかかったのだ。その時は、その軍艦自身と、乗員全員、搭載されていた開発中のものを含む、全ヴィーセンタの徹底した自爆という結果で機密は守られた。
今も、その自爆を決行した将軍の英断は称えられている。
ガレーネル・テューバッタ。将軍にして、第一王女ミルドレインの聖騎士。そして、彼女と将来を誓っていた。当時八歳だったティードリオスも、その面影はよく覚えている。優しく、強く、深く――理想だと思った。強く憧れた。
だが……義兄はもういない。国民の愛惜と、ミルドレインの哀傷を残して、逝った。
「……どうだ? 異常はないか?」
『大丈夫です。殿下』
答えたのは、彼の聖騎士。再調整プログラム投入後――いや、事故後初めての起動となる。
もともと、プログラムは完成していたのだ。だが、ためらいがあった。彼女を乗せたくなかった。だから、何度も修正ばかり繰り返していた。
それは、その特性から出た結果だった。他国を凌駕し、フェルキンドの地位を確立した兵器。その独自性は卓越し、構造・基礎理論全てが国家機密だ。仮令残骸でも、立派な情報流出源となる。
機密が洩れればどうなるか――独立から間もない小国を軍事大国に成した兵器だ。考えるまでもない。
12年前、ヴィーセンタの機密が漏洩しかけたことがあった。当時最新鋭だった軍艦が奪取されかかったのだ。その時は、その軍艦自身と、乗員全員、搭載されていた開発中のものを含む、全ヴィーセンタの徹底した自爆という結果で機密は守られた。
今も、その自爆を決行した将軍の英断は称えられている。
ガレーネル・テューバッタ。将軍にして、第一王女ミルドレインの聖騎士。そして、彼女と将来を誓っていた。当時八歳だったティードリオスも、その面影はよく覚えている。優しく、強く、深く――理想だと思った。強く憧れた。
だが……義兄はもういない。国民の愛惜と、ミルドレインの哀傷を残して、逝った。
「……どうだ? 異常はないか?」
『大丈夫です。殿下』
答えたのは、彼の聖騎士。再調整プログラム投入後――いや、事故後初めての起動となる。
もともと、プログラムは完成していたのだ。だが、ためらいがあった。彼女を乗せたくなかった。だから、何度も修正ばかり繰り返していた。