ティードリオス ~わが君にこの愛を~
しかし――そうも言っていられなくなった。義兄が何故、命をかけて守った機密か。愛するものを遺してまで、貫いた忠誠か。
今は無き、ファイクリッドの名。そこに由来するフェルキンド。
彼は、その名を継ぎ、その名に守られ、その名を行使する者なのだ。
責任が――あった。何よりも重い責任が。
「よし、本格的調整に入る」
『イレ・ルーヴュ・テオ』
――生まれながらの責務から逃げますか?
以前、そう言われた。当時の彼は、姉に甘え、甘やかされ、本当にどうしようもなかった。王族として生まれたことを疎ましくすら思っていた。
首から下げたロケットを、開く。
彼に、自らの全てを教えてくれた。過ちの全てを見せてくれた。責任の重大性を教えてくれた。
そして多分――『彼』の轍を踏むなと。
ロケットを閉じ、ラインハルトに乗り込んだ。
今は、使命と忠誠のまま動く彼女をありがたく思おう。
何を犠牲にしてでも、守るべきものがあるのだから。――彼女を喪う事になろうとも。
――フェーン・ルード・オム・ファイクリッド。
全ては――ファイクリッドの名の下に。
◇◆◇◆◇
今は無き、ファイクリッドの名。そこに由来するフェルキンド。
彼は、その名を継ぎ、その名に守られ、その名を行使する者なのだ。
責任が――あった。何よりも重い責任が。
「よし、本格的調整に入る」
『イレ・ルーヴュ・テオ』
――生まれながらの責務から逃げますか?
以前、そう言われた。当時の彼は、姉に甘え、甘やかされ、本当にどうしようもなかった。王族として生まれたことを疎ましくすら思っていた。
首から下げたロケットを、開く。
彼に、自らの全てを教えてくれた。過ちの全てを見せてくれた。責任の重大性を教えてくれた。
そして多分――『彼』の轍を踏むなと。
ロケットを閉じ、ラインハルトに乗り込んだ。
今は、使命と忠誠のまま動く彼女をありがたく思おう。
何を犠牲にしてでも、守るべきものがあるのだから。――彼女を喪う事になろうとも。
――フェーン・ルード・オム・ファイクリッド。
全ては――ファイクリッドの名の下に。
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