ティードリオス ~わが君にこの愛を~
フェルキンド王城。未だ、先の騒乱で空いた大穴の修復が終わらないその城の一室で、彼はキーを叩いていた。服装は、彼が着ることの多い王族の略装。歴史のデータベースを主に見ているようだ。他に人はいない。王族と、一部の者しか立ち入りを許されていない資料室だ。警護担当は部屋の外で待たせてある。もう数時間になるが。
と、扉が開く。入ってきたのは、女性にしては長身の、軍服を纏った金髪の美女。
「姉上……」
彼が顔を上げると、彼女は微笑み、
「報告もそこそこに調べ物か。……で、大事な話とは?」
「憶測ですが……コーレックを盗んだのは、嗣庚(しこう)ではありません。いえ、正確に言えば、嗣庚共同共栄体人民政府ではありません」
「どういうことだ?」
言いながら、弟が書き留めていたメモを見る。
「……まさか……」
「ええ。あの感覚は覚えています。まず間違いないかと」
言いながら、キーを叩き、問題の映像の一つを表示させる。コックピットに座った、栗色の髪の少年。
「姉上。彼に対抗するため、覚醒させたいのです。
私の――杖を」
◇◆◇◆◇
と、扉が開く。入ってきたのは、女性にしては長身の、軍服を纏った金髪の美女。
「姉上……」
彼が顔を上げると、彼女は微笑み、
「報告もそこそこに調べ物か。……で、大事な話とは?」
「憶測ですが……コーレックを盗んだのは、嗣庚(しこう)ではありません。いえ、正確に言えば、嗣庚共同共栄体人民政府ではありません」
「どういうことだ?」
言いながら、弟が書き留めていたメモを見る。
「……まさか……」
「ええ。あの感覚は覚えています。まず間違いないかと」
言いながら、キーを叩き、問題の映像の一つを表示させる。コックピットに座った、栗色の髪の少年。
「姉上。彼に対抗するため、覚醒させたいのです。
私の――杖を」
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