ティードリオス ~わが君にこの愛を~

「――分かった。いいだろう
 陛下には私から申し上げておく」

 ミルドレインは、溜息混じりにそう言うと、時計を見やってから急に表情を変え、
「ところで、洸流はどうなっている? 見舞いに行ったか?」
 十歳年下の弟の頭に手を置き、明るく言う。

「検査ですよ? しかも、今日と明日だけ」

 洸流は、帰還後すぐに一週間の休暇を取り――というか、無理矢理取らせたのだが――最初の二日間で検査入院となっていた。健康上の問題ということもあったが、何より、作戦終了後、意識を取り戻した彼女が作成した報告書の信憑性を確かめるものでもあった。彼もそうは思わないが、彼女の精神に異常がないと確認しなければならない。

「行ってやれ。喜ぶぞ。私も行こう」
 姉の笑顔に嫌な予感を覚えたが、彼はそれに従うことにした。


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