ティードリオス ~わが君にこの愛を~
「……で、どうなんだ? 上手く行っているのか?」
「何がです?」
「とぼけるな。……まったく、このごろは相談もしてくれなくなったな。
 惨敗だそうだが?」
「……よくご存知で」

 疲れた声で呻く弟。王城内の病院である。と、姉は一つの部屋の前で足を止めた。

「ここだな」
 言いながら、時計を見る。

「……何故、ご存知なんですか? ただの検査室ですよ」
 時計を見つめる姉に問うが、答えはない。検査内容を知っているにしても、まさか何時どの部屋にいるかなど分からないだろう。

「姉上。用事があるのなら行かれたらどうですか?」

「……そろそろいいか」
 意味ありげな呟きを洩らすミルドレイン。ティードリオスが眉をひそめるが、

「急用を思い出したので私は行く。洸流によろしくな。
 ――遠慮することはない。ぶつかって行け」
 何故か、とてつもなく悪戯っぽい笑顔でそう言い、姉は去る。

「……姉上?」
 歩み去るミルドレインを見送り、嘆息し、とても嫌な予感を覚えつつ検査室の扉を開けた。



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