ティードリオス ~わが君にこの愛を~
「……洸流!」
 勢いあまって、彼は彼女を抱き締めていた。

 そのまま、検査用のベッドに縺れ込むと、唇を重ね、
「洸流……洸流」

 ただ、それだけ呟く。
 彼女に覆い被さって。

「……イレ・ルーヴュ・テオ」
 暫くして、何の抵抗も見せず、彼女が呟いた。

 その言葉に、ティードリオスの中で何かが切れる。

「……どうして……そうなんだ……」
 彼女の腕を押さえる手に、力が入る。手が震える。

「こんなことをされて、悔しくないのか!? 怖くないのか!?」
 叩きつけるように、叫んでいた。

「私の為!? それだけで、全てを投げ出せるのか!? 友まで撃って!!
お前はそれで満足か!! お前に、大切なものはないのか!!」

 押さえつけられたままの彼女。反応はない。

「私は、お前の何なんだッ!?」
 そこまで叫び終わると、彼は我に返った。

「……すまない」
 彼女の身体をマントで覆い直すと、すぐに検査室の出入り口に向かい、

「私を……見てくれ。……頼む」
 そう、ぽつりと呟いて、出た。

 彼には――それが、精一杯だった。



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