ティードリオス ~わが君にこの愛を~
翌日。いや、もう午前をまわったので翌々日になる。夜中、彼は人気のない廊下を歩いていた。王城内の居住区。普段なら、彼が、まず来るところではない。
――ここか。
部屋の番号を見て、心中で呟き、インターホンの音を最小にして押した。これなら、眠っていれば気づかないだろう。
しかし――少々間を置いて、扉が開く。彼女は――
「……殿下……?」
一呼吸置いて、そう呟いた。
「ああ。昨日はすまなかった」
言い、サングラスを外すティードリオス。勿論、光への対策ではなく、人目を避けるためのものである。加えて、今の彼は私服――王族の服装ではないし、黒い長髪も流れるに任せている。一瞬、洸流が分からなかったのも無理はないだろう。唯一同じなのは、胸のロケットか。
「……何故……このようなところに……」
「それより、だ」
呆気に取られたような彼女を、ジト目で見て、
「何故、起きている?」
簡潔に問う。
そう。それが彼が来た理由。眠っているならいいと思っていたのだが……まさか起きていたとは。時刻は、午前二時過ぎ。
「少しも懲りていないようだな」
「あ……申し訳ありません。眠れなくて……」
「薬は? 飲んだのか?」
「……いえ……」
彼は呆れ気味に嘆息し、
「この休暇中に管理を取り戻してくれ。
……薬を飲んで寝ろ」
「……はい」
言って、中に入る洸流。
「悪いが、眠るまで見張らせてもらう」
信用のない台詞を吐き、彼女に続いて部屋に入り――ティードリオスは反応に困った。