ティードリオス ~わが君にこの愛を~
「洸流……これだけか?」
「……はい?」

「いや……何となく……殺風景すぎないか?」

 それが、第一印象。備え付けの家具とパソコン以外は何もない。写真とか、そういうものも一切ない。カーテンやシーツも、標準的な無地の地味なものだ。……もしかしたら、支給品のリストの一番上にあったものではないだろうか。

「よく言われます」
 あっさりと言う彼女。そう言われてしまっては何も言えず、仕方なく元の話題に戻った。

「……薬を飲め」
 言われる通りに薬を飲む彼女を横目に、起動中のパソコンが目に入る。

「……電源を落としていいか?」
「あ、はい」
 開いているのは、インターネットとミュージックプレイヤーのみ。まずは、インターネットを閉じるべく、ポインタを動かした。と、ブックマークのファイルの上を通過した時に、一覧が開いた。

「……洸流……」
「……何か?」

「その……見る気はなかったんだが……ブックマークのリストを開いてしまった。
 それで、訊きたいんだが……これだけか?」
「……え?」

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