ティードリオス ~わが君にこの愛を~
 リストにあったのは。

 一つ。総合情報検索サイト。最も有名なものだ。

 二つ。音楽ダウンロードサイト。これも大手。

 三つ。研究機関レベルの神聖言語学習用サイト。どうやら、会話程度という彼女の言葉は謙遜だったらしい。

 四つ。騎士団の支給品一覧・申し込みサイト。おそらく、王城に配置換えになってからは使っていないのだろう。

 五つ。王城仕官の支給品一覧・申し込みサイト。

 ――以上。他はない。何もない。

 何だか、音楽サイトが唯一の救いのような気がした。
「……もういい、すまなかった」
 反応がいまいちの彼女に、眩暈を覚えながら、彼はインターネットを閉じた。

 次いで、ミュージックプレイヤーを閉じる。収録曲が一曲だけなのも気になったが、この際突っ込む気になれなかった。

「ところで、一つ確認したいが……お前の身内は、本当にもう誰も?」
「……はい。遠い親戚なら、いるにはいますが……」
「父方の親類は?」

 何気ない風を装った彼の問いに、洸流は、少し考えて、
「いえ、父方は特に……。遠い親戚も母方で……」
「そうか。ところで、この際だから言っておく」

 意を決し、彼は、横たわる洸流の顔を覗き込んだ。
「私は、お前を愛している」

 反応は、ない。

「だが、私は王族だ。生まれながらの責務がある。それを放棄するつもりはない。だから――
 私の身も、そしてお前さえも、切り捨てなければならない。そう判断することも、ある。

 ……お前を……犠牲にすることも厭わない。

 だが……私は、お前に惹かれている。……それだけだ」

 言葉の後に落ちたのは、沈黙。彼女が眠るのを見届けてから、部屋を出た。

「……おやすみ」
 眠った彼女に、そう言い残して。

 何事もなかったかのように自室に戻ったが、翌日、彼の前夜の行動がメディアに洩れていた。リーク元は――姉だった。

 ティードリオスは、無論、迷わず姉の部屋に怒鳴り込んだ。

 のらりくらりと、愉しそうな姉に、殺意すら抱いたが……何が変わるでもなかった。


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