ティードリオス ~わが君にこの愛を~

「ティオ♪ 借りるぞ」
 唐突に弟の自室に押しかけそう言って、ミルドレインは有無を言わさず洸流を連れて来た。

 四月。既に、弟と洸流が出会って三ヶ月が過ぎていた。

「……で、ティオをどう思っている?」
 自室に引っ張り込み人払いをし、ソファに座らせてそう迫った。
「……敬愛しております」

「そうではない」
 上機嫌な声で、問う。
「一人の女として、どう思っているか訊いている」

「お慕いしております」
 迷わず答えた洸流。

「つまりは、添い遂げる覚悟はあると、それでいいな?」
 にっこり笑顔で言うと、彼女は顔を曇らせ、
「でも、殿下は王族です」

「良いではないか。王族でも」
 彼女の両肩に手を置き、溜息混じりに言う。
「生まれは変えられん。
 ティオも、それで苦しんでいる。……知っているであろう?」

「はい。何度か……言われました。分かっています。それを責める気はありません。
 それでも……」

「ん? 何だ?」

「私のことを好きとは言いますが、いつもあの人のロケットを……」
「ああ」
 むくれたような洸流に、合点がいったように、笑うミルドレイン。

「それは、本人に問い詰めてやれ。……まあ、確かに、気分のいいものではないな」

 言うと、奥の部屋に入るミルドレイン。ややあって、布の塊を持ってきた。
「ふむ……これがいいか」
 持ってきたうちの一着を取ると、丈を見て、

「よしよし、詰めればいいな。こっちへ来てこれを着てくれ」

 強引にそれを着せて、サイズを合わせ始める。

「殿下……これは?」
 洸流の問いに、哀しげな笑顔を浮かべ、
「私が18の頃に着ていたものだ。当時は……まあ、華やいでいたからな」
 言いながら、器用に針で縫っていく。

「次は髪か……」
 言って、愉しそうに彼女の髪を解いていじりはじめた。


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