ティードリオス ~わが君にこの愛を~

「ティオ、待たせた♪」
 約二時間後。戻ってきた誘拐犯の愉快な声に顔を上げ、ティードリオスは言葉を失った。

「今日は仕事はいい。そうだな……前庭あたりを二人で歩いて来い」

「あ、姉上?」
「ほらほら、お前も少しは洒落た格好に着替えろ。外で待っているぞ」
 言うなり、洸流を連行し扉を閉めた姉に、胸中で呟く。

 ――ついに、実力行使に出たか……。

 検査室の一件のみならず、以前もそういう行動がなかったとは言えないが。

 ともあれ、姉の権力で命令にされてはたまらないので、素直に従うことにした。

 ――玩具にされている気も、しないでもなかったが。


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