ティードリオス ~わが君にこの愛を~
「お前は……私が王族だから側にいるのか? もし、私が王族でなかったら……お前はどうするんだ?」

「その時は……」
 彼とは打って変わって。洸流の言葉に迷いはなかった。
「対等の男女として、接します。
 ――愛していますから」

 また、風が吹く。

 ティードリオスは、苦笑を洩らして彼女を抱き締めた。
「私は、確かに王族だ。それは、否定できない。
 だが……お前を愛する。一人の男として」

 両手で、彼女の頬を包み込む。
「……それで、いいか」

「ええ、ティオ」
 春に陽射しに伸びた、2人の長い影が、重なった。

 それを見届けたミルドレインは、今は無粋な真似はすまいと、黙ってモニターを切った。

 婚約の正式な発表の申し入れ、挙式を七月二五日にし、先日完成した第九期の公表を同日に行いたいという進言。それらを二人が持ってきたのは、その日の夕刻のことだった。



◇◆◇◆◇


< 59 / 71 >

この作品をシェア

pagetop