ティードリオス ~わが君にこの愛を~
「……う……」
呻いて身を起こすと、慣れた光景だった。
いや、正確には、違う部屋だ。2週間前に、2人で暮らすために部屋を変えた。だが、以前の部屋と大して雰囲気は変わらない。もっともこれは、彼の趣味が出たというのではなく、ただ単に洸流の希望が一切なかったというだけなのだが。
「……洸流……」
覗き込んでいる顔を見る。
「……無茶しないで」
「……すまない」
そう言って、身を起こした。窓の外は、もう暗い。数時間眠っていたらしい。
ロケットが、胸元で揺れた。
「……どうした?」
機嫌が悪い。それは一目で分かった。だが、怒らせるようなことをしただろうか? 確かに、彼女の目の前で無理はしたが……必要なことは、彼女も知っている。
長い沈黙の末、彼女は黙って、彼が首から下げたロケットを掴んだ。
「これ、いつまで下げてるの?」
不機嫌そのものの顔。
「ああ、違うんだ」
彼は、苦笑を洩らし、
「好きというのとは、違う。確かに、初恋だったが……今は、尊敬と、感謝と。そんなところだ」
言って、ロケットを開く。
「彼女はリリア。……1500年前の、フェルキンド王家の祖先だ」
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