ティードリオス ~わが君にこの愛を~
 迷彩状態に入ると、それより上の技術がないと、姿を確認できない。第八期ラインハルト、本日公表予定の第九期。それらが迷彩に入れば、ミルドレインのディーンハルトを別とすれば、感知できるものはなかった。
『……来た。予定通りに頼む』
「イレ・ルーヴュ・テオ」

 洸流は、今日で最後となる言葉を口にする。
 妃となれば、今までの地位は消失する。王族配偶者としての名のみが残り、聖騎士の名は過去となる。彼の聖騎士として、ホーレスト子爵として、今日が最後の日だった。

 やがて、ティードリオスが示した地点に、歪みが生じる。

 すぐに意識を集中させて、磁場を発生させた。現れた、少年の人影を取り込み、高速で移動する。

 海岸が見えた。一般用ではない。有名な練兵場である。今日は、圧力をかけて空けさせた。

 ずしゃあっ!

 轟音と共に、第九期が、そして、その磁場が海岸に落ちる。
 二機は、迷彩状態から抜け出した。

 洸流は、密閉状態を解除し、
「悠夾(ゆうきょう)! 降伏して!」

 磁場に捉えられた人物――長い栗色の髪の少年に、言う。
「あなたを殺したくない」
 全兵装を、彼に向けながら。

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