ティードリオス ~わが君にこの愛を~
 と、反応。ラインハルトは指揮官用なので、状況把握が簡単だった。

「殿下! ベリエットが方位一〇九八に!」
『ディーンハルトの反応はあるか?』
「お待ちください。今――」

 答える最中に、回線に反応。
『ティオ……何だお前はっ!』

 王族専用の回線で入ってきた映像と声。ラインハルトと同じく、指揮官専用に作られたコックピットを背景に、金髪の女が映る。紛れもなく、第一王女ミルドレインだった。

「第五騎士団所属、洸流・ホーレスト子爵であります。
殿下は無事です。自分のデューレックに」

『何故、ラインハルトに乗っている?』
 王族専用の軍服が良く似合う、ミルドレインが厳しく言う。
『私の指示です。姉上』

 ミルドレインと同じような服装の、細い体つきに、後ろで束ねた長い黒髪、端正な顔立ちの男が回線に割って入る。ティードリオスである。

『彼女の方が優秀でしたので、私の独断で任せました。責任は私に』

『……分かった。片付けるから避けていろ』
 戦線から逃れると同時に、光条が宙を凪ぎ、相次いで爆発。空母ベリエットの大砲と、重戦闘用ヴィーセンタ・ディーンハルトの光砲《ガルトセルン》である。

『何とかなったな……。ご苦労だった』
「イレ・ルーヴュ・テオ」
 王太子の追っ手が全て消えたのを確認し、ティードリオスが言った言葉に、洸流は短く答えた。



◇◆◇◆◇


< 7 / 71 >

この作品をシェア

pagetop