ティードリオス ~わが君にこの愛を~
真空化した中心を補うため、辺りの空気が、海水が、轟音と共に流れ込む。
その光景を、二機のヴィーセンタが見下ろす。ややあって、
「騒ぎを聞きつけたメディアが来る。迷彩に入ってくれ」
『イレ・ルーヴュ・テオ』
二機のいる空間を、強くなり始めた朝日が透過した。
今ならまだ、そこまで大きな騒ぎにはなっていないだろう。どちらからともなく、王城に向かって飛び始めた。
「洸流……大丈夫か?」
『大丈夫じゃ……ありません』
返ってきた彼女の声は、泣いていた。
『悠夾……せっかく……せっかく……』
「……また、お前に撃たせてしまったな」
今度は、かけがえのない弟を。
『……あなたの方が、大事だもの』
「……ありがとう。すまない」
手が触れられるなら、抱き締めていただろう。自然と、何も無い胸を手が掴んだ。
――いいだろう? リリア。
後ろの映像に目をやりながら、そっと胸中で呟く。
――私は、彼女と生きていける。リュシオス王と引き裂かれた、貴女の分まで。
開きっぱなしだった格納庫から入ると、ミルドレインが待ち構えたように出迎えた。
◇◆◇◆◇
その光景を、二機のヴィーセンタが見下ろす。ややあって、
「騒ぎを聞きつけたメディアが来る。迷彩に入ってくれ」
『イレ・ルーヴュ・テオ』
二機のいる空間を、強くなり始めた朝日が透過した。
今ならまだ、そこまで大きな騒ぎにはなっていないだろう。どちらからともなく、王城に向かって飛び始めた。
「洸流……大丈夫か?」
『大丈夫じゃ……ありません』
返ってきた彼女の声は、泣いていた。
『悠夾……せっかく……せっかく……』
「……また、お前に撃たせてしまったな」
今度は、かけがえのない弟を。
『……あなたの方が、大事だもの』
「……ありがとう。すまない」
手が触れられるなら、抱き締めていただろう。自然と、何も無い胸を手が掴んだ。
――いいだろう? リリア。
後ろの映像に目をやりながら、そっと胸中で呟く。
――私は、彼女と生きていける。リュシオス王と引き裂かれた、貴女の分まで。
開きっぱなしだった格納庫から入ると、ミルドレインが待ち構えたように出迎えた。
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