ティードリオス ~わが君にこの愛を~
――はぁ。
彼女は、溜息をついた。騎士の正装を身に纏って。
質問会がようやく終わった。あれから五日が過ぎていた。査問会にならず、事実確認の確認だけで終わったのは、ティードリオスが庇ってくれたおかげだろう。状況が状況とはいえ、王族専用機のハイトに乗ったのだから仕方がない。
王城ではない。そこから西に位置する、離宮の一つである。ここが、城を追われたミルドレイン一派の拠点となっている。
王太子が起こした今回の騒乱については、国王は外交上の手配をしただけで静観を決め込んでいる。国は、王太子の地位に従う者達と、王女の信望に集まる者達とに分かれた。
だが、不安はなかった。あの王太子の無能さは、遠目にしか見ていない彼女もよく知っている。何ゆえ、王太子は自らの足元を崩すような真似をしたのか。王女がいなければ自らの地位を支えるものなどないということを、身をもって知るだろうに。
まあ、友人たちに言わせれば、自分は幸運なのだろう。爵位を持っているとはいえ、下級貴族であるし、一騎士でしかない。もっと言ってしまえば、下級騎士だ。ヴィーセンタ操縦の腕を見込まれてこの年で王族の警護に抜擢され、結果的に襲撃から生還した。王子を守り抜いたため、務めも果たしたと言っていいだろう。ラインハルトに乗ったことは、公の記録に残ったし、ミーディスあたりならそれを羨ましがるかもしれない。
事態が事態だったとは言え、王族と直接話せたし。滅多にあることではない。