君の瞳に映る色
「なのに絢が教会で式を
挙げたいって言うから
大変だったんだよ」

俊が苦笑いする。
そうそう、と玲も一緒に笑った。

「だって大きい教会でするのが
夢だったんだもん」

布団の中からくぐもった声が
聞こえる。
拗ねた顔を少し布団から出して
絢がこちらを見ていた。

「そう言ってたね。結婚記念日に
仕事が入ったのは悪かったけど
忘れてたわけじゃないよ??」

あぁ、と玲が
思い出したように呟く。
明日だったっけ、と言った。

そんな事で怒ってたのか、と
呆れた視線を絢に向けると
絢は怒ったように玲を睨む。

あの、と場違いに棗の声が
部屋に響いた。

「お2人は結婚する事に
抵抗はなかったんですか?」

一瞬部屋がシンとする。
失礼なやつだなと
玲が苦笑いした。

「だって、人間と、その
ヴァンパイアって…」

言いながらも確かに失礼な質問に
思えてきて声は途切れていく。

「絢はあまりヴァンパイアっぽく
ないしね。血も吸わないし」

俊は特に気にする様子もなく
穏やかな笑顔のまま答える。

棗は驚いて目を見開いた。

玲の行動を知っているだけに
血を吸わないというのが
俄かには信じられなかった。




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