君の瞳に映る色


程なく執事として働く事を許され
屋敷に入った。


その頃、柊は37歳
菖蒲は14歳だった。

柊を暁生の手先といって
なかなか懐かず挙句周囲の反対を
押し切って勝手に18で
結婚してしまった。

豪華絢爛な結婚式で大勢の人間に
祝福される間、菖蒲は一度も
笑わなかった。

支度を手伝いに控え室に入った時
当然ながら柊は菖蒲に聞いた。

「そんな顔をされるならどうして
結婚などしたのです?」

少しずつ柊には心を
許し始めていた菖蒲はその日
一番の笑顔を浮かべて言った。

「お父様から全て奪う為よ。
会社も屋敷もわたしにとっては
ゴミ同然だけどお父様にとっては
命よりも大切なものよ。わたしは
それを全部奪ってやりたいの」

とても幸せの絶頂にいるはずの
花嫁が口にする言葉とは
思えなかった。


なぜ、そこまで…、呆然とした
気持ちで呟きながら柊は深い深い
悲しみを覚えた。





< 195 / 352 >

この作品をシェア

pagetop