君の瞳に映る色

暁生のすごさや良さを知っている
柊としては菖蒲が暁生をそこまで
憎む理由がわからなかった。

言葉が続かず立ち尽くしている
柊に支度を終えた菖蒲はドレスを
握り締めながら言う。

「……屋敷も会社も
なければよかったのよ」

化粧を施し直したばかりの頬を
雫が伝って流れた。

悲しみに満ちた深いネイビーの
大きな瞳を見つめながら
柊は何も言う事が出来なかった。





ドアから出ると柱の陰に
メイドたちが集まって
井戸端会議のようになっていた。

「さぁ、仕事をしてください」

声を掛けると4人は散り散りに
自分の持ち場へと帰っていく。


いつもと変わらない穏やかな
太陽の光が、屋敷の廊下に
日溜まりを作っていた。








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