君の瞳に映る色

自宅に訪れた柊の話を聞いて
暁生は苦笑いした。

「相変わらず嫌われてるな」

暁生は長い間会っていない
自分の娘の顔を思い浮かべた。
妻譲りの黒い艶のある髪に
自分と同じネイビーの瞳。

チェストの上にある写真立てを
暁生は手に取った。

元気だった妻の隣で
満面の笑顔を見せる菖蒲、
その横には若い頃の自分。
唯一の家族写真はもう古びて
端が黄ばんでいた。

暁生は苦しげに眉を寄せて
目を伏せた。

「居場所の見当はついてるのか」

２人分の紅茶を入れる柊に
向かって声を掛ける。

「ついてはいませんがお嬢様は
無茶はされないでしょう」

柊の言葉に同意するように
暁生は小さく頷いた。

素直じゃないな、菖蒲はとぼやく
暁生に柊は微笑を返した。

「その言葉そっくり
お返ししますよ」

目の前に差し出された紅茶を
受け取ると、酸味のある
紅茶の香りが鼻腔をくすぐる。