君の瞳に映る色
暁生は不満そうに眉をひそめた。

「今さら何を言ってもあいつは
また心を覗かれたと思うだろう。
わたしたちは死ぬまで
この関係のままさ」

肩を竦めて、困った人ですねと
柊が溜め息を吐く。

「そういうおまえはわたしに
仕えた時から敬語をやめないな。
いらないと言っているのに」

紅茶に口をつけながら横目で
チラリと暁生を見ると、
「死ぬまでこのままですね」と
柊は小さく笑った。

困ったやつだ、と
暁生も笑った。

「相変わらずおまえの入れる
紅茶はうまいな」

満足そうな笑顔で暁生は
紅茶を味わう。
柊もつられて笑顔を返した。

「一番初めに暁生さんに
教わったことですから」

遠い昔を懐かしむように柊は
目を伏せて思いを馳せた。

会話の途切れた静かな室内に
カップがソーサーに
当たる音だけが響く。

「…お嬢様の為にも奥様と
話をしてください」

柊が穏やかな声で言う。

しばらく間をおくと、暁生は
「考えておくよ」
と答えた。




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