君の瞳に映る色
勢いで棗の身体は棚と玲とに
挟まれたような状態になった。

「こら」

苦笑いしながら言うと、棗は
バツが悪そうに眉を下げる。

そんな棗の耳元に意地悪く玲は
顔を寄せた。

「耳まで真っ赤」

囁くように言いながら、
耳を甘噛みする。

棗の身体がビクンと震えた。

小さい棗の悲鳴は
覆われた玲の大きな手によって
吸収されていく。

もう片方の手を棗の背中に回して
身体をさらに密着させた。

唯一手で覆われていない目が
不安げに玲を見上げる。

「騒ぐと誰か来ちゃうかもよ」

軽い調子でわざと
そんなことを言いながら、
ゆっくりと手を外して
代わりに自分の唇を重ねた。






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