君の瞳に映る色
「…そういえば棗ちゃんは?」
絢の言葉に玲は弾かれたように
顔を上げた。
「家、だと思う」
いきなり飛び出してしまって
無我夢中で家に帰ったが、棗は
わけがわからなかったはずだ。
自分を探しに出たかも、
そこまで考えて玲は無意識に
立ち上がっていた。
腕に抱かれたままの少女は
きょとんとしている。
「俺、帰るわ」
「はぁっ?!」
絢も慌てて立ち上がる。
「ちょっと、待ちなさい。
今の状態で帰るのは危ないわよ」
玄関へ向かおうとする玲を慌てて
絢は止める。
「今は薬で落ち着いてるけど
血液不足に変わりはないんだから
大人しく今日は家にいなさい」
でも、と言い淀む玲に
絢は肩を竦めた。
「あたしが見てきてあげるわよ」
チビたちの面倒見ててね、と
笑うと絢はコートを羽織って
家を出た。