君の瞳に映る色


階段を2人で上へ上へと上がる。

上へ逃げれば逃げるほど
追い詰められるのは
わかっていたが、下から近付く
気配に他に逃げ場がなかった。

「大丈夫か?」

足を引き摺りながら玲が聞く。

平気、と微かに笑顔を見せつつも、
本当のところ倒れそうなくらいに
気分が悪かった。

急激に身体の熱が引いて
指先は冷たい。
なのに、背中には嫌な汗が
じんわりと滲む。

薬のせいなのはわかっていたが、
それをケガのひどい玲に言うのは
躊躇われた。


階段を上りきると、
そこが何階なのかわからないが
最上階のようだった。

窓から見える景色がかなり
高い位置にある。

手近な扉を押して中へ入る。

そこは広間になっていて、
奥にはグランドピアノ、
フロアにはテーブルが並べられ
等間隔に椅子が配置してあった。

天井から伸びる長いベルベットの
カーテンはドレープを作って
左右で止められ、
その向こうに大きな窓があった。





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