君の瞳に映る色

庇うように玲の前に立つ棗を
一色が鼻で笑う。

「特殊な弾なんだ、
人間にはあたらねぇよ」

「あたるわよ。さっき玲に
血をあげたの。櫂斗さん、
この意味わかるでしょ?」

怪訝そうな顔で一色は櫂斗に
視線を移す。

同じように話がわからない玲も
櫂斗のほうを見た。


櫂斗は黙って棗を見つめている。


まっすぐ櫂斗を見てくる棗に
櫂斗の心が微かに揺らいだ。

「はったりだろ、気配は人間だ。
ま、撃てばわかるか」

引き金に指をかけた一色を
櫂斗が制した。

「よ、よせ」

焦りを宿した櫂斗の声を振り切ると
一色は迷い無く引き金を引いた。

銃声が天井の高い広間に響く。

同時に弾を受けたガラスが
派手に割れた。


棗を抱きかかえたまま床に伏せた
玲はさっと身体を起こす。

棗がその下で呻いた。

「…もうやめろ」

「いいや、約束だろ。やったら
300、きっちり払ってもらう」

一色は銃を構えたまま
玲と棗に歩み寄る。






< 308 / 352 >

この作品をシェア

pagetop