君の瞳に映る色


「動くな、一色」

後ろからの声に櫂斗と一色は
固まった。

首だけを動かして
後ろを振り返る。

若い男が2人、こちらに向かって
銃を構えていた。

「銃を捨てろ」

少し前にいる男が
一色に命令する。

「はい、そうですかって素直に
聞くと思うか?」

「外にも仲間がきてる、
無駄な抵抗はやめろ」

「…動けばこいつを撃つ」

怯むことなく一色は言い放った。

動く事のできない緊迫した空気が
辺りを包む。
広間が不気味な静寂に
支配された。


「女をよこせ」


不意に一色が玲に命令する。
その言葉に玲だけでなく
櫂斗も目を丸くした。

玲の腕の下から引きずり出すように
一色は棗を引っ張り上げた。

銃口をピタリと自分に向けられた
玲は呆気なく棗を奪われる。

無理な体勢で引かれた棗は
苦しげに顔を歪めた。








< 309 / 352 >

この作品をシェア

pagetop