王子様のお妃候補?
王宮からの遣い
アリュエインは、コンコンと丁寧に執務室のドアをノックしました。
「父様、アリュエインです。」
「入りなさい。」
ファルマーの声にアリュエインは頭を下げて執務室に入ります。
父と言っても、執務室ではカシェルク領の”公爵”です。
だから、アリュエインも執務室では、父ではなく公爵としてファルマーと会わなくてはいけないのでした。
執務室には窓際にファルマー専用の仕事用の机があり、その前には来客用の椅子が置いてあります。
ファルマーは自分の机の横に立ちながら窓から見える景色を眺めていました。
そして、部屋にはもう二人いました。
「ミシェラン兄様、フォルトマ兄様。どうしてここに?」
それは、アリュエインの大好きで尊敬できる二人の兄たちでした。
「アリュエイン、お前、まだそんな恰好をしていたのか。」
ミシェランはアリュエインの姿に、しょうがない奴だ。とため息をつきました。
「今、鍛練場にいたんだ。久しぶりだったから身体がなまってた。でも、やっぱり身体を動かすのは楽しいね。」
「アリュエインは本当に元気がいいね。」
フォルトマはアリュエインのお転婆にクスクス笑っています。
アリュエインは二人の真ん中の椅子に座りました。そして、不思議そうに二人の兄を見上げました。
「何故、兄様たちがこんなとこにいるんだ?兄様たちも呼ばれたの?」
「いいや。フォルトマからアリュエインが父上に呼ばれたのを聞いてね。私たちはそのことを何も知らされていなかった。」
「え!」
アリュエインは驚きで目を丸くしました。
将来のためと兄たちは父のもとで様々な実務をこなしていました。
だから、父も何かあると必ず二人に伝えて、意見をあおぐのです。
なのに、今回のことは二人にも知らせていないというのだから、アリュエインは不可解でなりませんでした。
「父様…?僕は何で呼ばれたんですか?」
ファルマーが一向に窓からの景色を眺めるばかりで、アリュエインたちに背を向けています。
その姿に、アリュエインはますます訳が分からなくなります。
(父様…どうしたの?)