王子様のお妃候補?
『親愛なるファルマー・カシェルク公爵殿。貴殿のカシェルク領での素晴らしい評判をいつも耳にしている。カシェルク領は王宮からは遠いとはいえ、貴殿にまかせていてばかりですまない。いつも感謝している。そして、今回のことだが…単刀直入に言おう。貴殿の愛娘をぜひ我が息子シークラントの妃候補となり近日中に城へ参上してもらいたい。随分強引だと思うかもしれないが、どうか許してほしい。我が国の繁栄と安寧を祈る。』
手紙の内容が朗々と読み上げられ、その後誰一人として口を開く者はいませんでした。
いつも冷静なミシェランでさえ、あまりの唐突な王様の申し出に口を半開きにしておりました。
フォルトマも大きく目を見開いたままサムールがもつ王様からの手紙をじっと凝視しています。
アリュエインは茫然としていました。
(ぼ、僕が…王子様の……?)
「お分かりいただけましたか?アリュエイン様には明日にでもすぐに王宮へ向かっていただきます。」
「あ、明日!?」
いくらなんでも急すぎではないか。と、アリュエインは素っ頓狂な声を上げてサムールを見つめました。
「はい。もう他のお妃候補様がたも王宮へ向かっているはずです。」
「他の妃候補というのは…?」
ミシェランは眉をひそめて問いました。
すると、サムールは当然とばかりに口を開きました。
「アリュエイン様の他に四人の候補者のかたがいらっしゃるんですよ。ですから、アリュエイン様は五人目の候補者です。」
「……はぁーっ!?」
妃候補が五人もいて、どうするのか??と、アリュエインは不思議でなりません。
(何でその中に僕が入らなくちゃいけないんだ!辞退しようかな?他に四人もいるんだし、一人ぐらい抜けてもいいよな)
「あの、サムール様。僕はそのお話を辞退したいのですが…。」
遠慮がちに言うが、サムールはとんでもない!と首を横にふりました。
「王様は五領地の公爵、伯爵位のご令嬢がたから妃候補をお選びになるつもりです。ですから、カシェルク領唯一の公爵令嬢であられるアリュエイン様には、ぜひとも王宮へ参上してもらわねばなりません!」