王子様のお妃候補?
王子様との対面
”王の間”と呼ばれる、広いホール状の場所は、王様がそこで客人と謁見したり、盛大なパーティーを行う時に使われ、そこには金粉や宝石で飾りたてられた王座が据えられてあります。
アリュエインはサムールの後に続いて、王の間へと繋がる、どこまでも伸びていそうな廊下を歩いていました。
「サムール。」
「何ですか?」
「王様って、どんな人?」
アリュエインは王様を一度も見たことがありませんでした。
カシェルク領は王宮から1番遠く、また質素堅実なファルマーたちは王宮で行われるパーティーにも誘われても参加はしませんでした。
だから、アリュエインは”話”でしか王宮や王様について何も知らなかったのです。
「そうですね…。わたくしも頻繁にお会いはしませんが、ハルルク様がおっしゃるに王様はとても賢く、仕事を真面目にやる方だと聞いています。…多少、悪戯な面もありますが。」
最後の方で小さく囁くように言ったことは、さほど気にせずアリュエインは
「そっか、いい王様なんだな。」
と、感心したように言いました。
アリュエインも旅路の中で少しはサムールという人柄を学んでいました。
彼は、常に冷静で何でもそつなくこなす無表情な人間です。
そのサムールが尊敬の念をこめて王様のことを話しているのをアリュエインは感じました。
だからこそ、王様はとても素晴らしい人物にちがいないと思っていました。
「じゃあ、王子は?名前は…シークラント・レイ・アルファティア…だよね?」
「…シークラント様は、とても美しく、賢い王様によく似ていて素晴らしい王の素質をお持ちの方ですよ。」
そう言って、サムールは先程よりも早足で前を進んでいきました。
(…何で、あんなに焦ってたんだろう?王様の時は、すっごく余裕そうな顔してたのに。)
アリュエインは、まだ見ぬ自分の(一応)夫候補?の王子に対して疑問を抱いたまま、サムールの後を追っていきました。