王子様のお妃候補?

テンション高い…と、アリュエインが真っ先に思ったのは、彼の大袈裟なほどの歓迎ぶりのせいでした。


王様はアリュエインから見ても大人の魅力に溢れたまだ若い活力がありそうな素敵な人でした。


王家特有の金色の髪を肩より少し下にまで伸ばしていて、見た目は20代後半にも見えました。


王様は端正な顔を緩めて、両手を広げながら歓迎の意をしめし、ゆっくりと五人の娘たちのもとへ歩いて行きました。


その後ろには、几帳面な眼鏡をかけて澄ました顔をした長身の男性がいました。


「ハルルク様」


「サムール、長旅をご苦労でしたね。今日は仕事はいいので、ゆっくり身体を休めなさい。」


「はい。」


サムールは丁寧に頭を下げた後、ちらっとアリュエインの顔を見てから広間から出ていきました。


”頑張って下さいね


サムールのささやかな激励にアリュエインは嬉しく思いながら、心の中でサムールに別れを告げました。


(またね、サムール。)









「さて、娘さんたち、ようこそ。王宮へ」



王様は王座に腰かけてから、娘たち一人一人にゆっくりと微笑みかけました。

それに対して、娘たちは作法通りにドレスの裾をつまんで頭を下げました。


王様はその姿にさらに微笑みながら、最後にアリュエインを見ました。


その目は、一瞬見開いたかのように見えましたがすぐに微笑みを向けました。
それに、アリュエインもコートの裾をつまんで礼を返しました。



(―…めんどくさい)



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