王子様のお妃候補?
「クスクス。まぁまぁアリュエイン嬢。王宮の外については何とも言えないが、王宮でも色々と楽しめるものだよ。」
「は、はい。」

アリュエインは赤い顔のまま、コクコクと首を縦に降りました。
その姿に、王様はさらに笑ってしまいました。

「クス、じゃあ、そろそろ部屋に戻るといい。今日は、ゆっくり休んでほしい。近いうちに晩餐会を開こうとも思っている。楽しみにしているといい。…彼女たちを部屋に連れて行きなさい」

王様の言葉と同時に、王の間の扉が開かれ、そこから数人の侍女たちが入ってきて、アリュエインたちは侍女たちの後を着いていくように言われました。
五人は王様に一礼をして、それぞれの侍女たちの後に着いていきました。


―――…


「シーク。どうだった?お前の婚約者候補たちは。」

アリュエインたちが出て行った後の広間で、王様は王座で頬づえをついたまま隣りにたつ息子に問いかけました。
王の間には今、シーク、王様、ハルルクの三人しかいません。
シークは整った顔を王様に向けました。
「これといって、別に。」
「つまらんなーお前は。ほら、あの綺麗な娘はどうだ?」
「彼女は確かに綺麗でした。五人の中で…いえ、国中でもあれほど綺麗な娘はいないでしょうね。」
淡々と告げるシークに、王様はハァとため息をつきました。
「……ここまで難しい奴とは思わなかった。」

「だから言ったでしょう?私は彼女たちの誰とも結婚する気はあるません。」


(シークは私に似て頑固だからなぁ。ただ綺麗なだけじゃ、シークの気持ちはまだ変えられない…か。)


再度ため息をついた王様はふと、思い出しました。
「シーク、あの娘…アリュエイン嬢はどうだ?」
「アリュエイン嬢?…あぁ、あの。」
「うむ。なかなか面白い娘だったな。」

思い出し笑いをする王様に、ハルルクも「確かに。」と同意しました。
「…確かに変わった感じでしたけど、所詮女ですよ。」

呟くシークを、王様はまぁまぁと見つめました。
「今は会ったばかりだからな。これから互いを知れば、何かが変わるかもしれないぞ?」
そう言う王様をシークは気にしていませんでした。
(ふん。変わることなんて、あるわけないだろ。)

シークはこの時、そう信じて疑っていませんでした。

< 33 / 64 >

この作品をシェア

pagetop