王子様のお妃候補?
思わず吹き出してしまうと、デボンがキッとシークラントに目を向けました
「王子…今、笑いましたね?」
「…いや、別に…」
シークラントは、平静を装うとするが、どうにもデボンの顔が見れば見るほど熊さんに見えてきてしまい、口元がピクピク引き攣りそうになりました
「王子…」
「……」
「隊長ー!!今朝の朝ご飯は蜂蜜っすかぁ??」
………稽古場には、爽やかな朝と清閑な城の敷地に似合わず、男たちの笑いが鳴り響いた
ーーー…
「お前はっ!!」
「あでっ!」
あのあと、散々爆笑させられたデボンは、今までになくどす黒い声で朝の走り込みを倍増し、隊員の笑いを取り払ってしまいました
フェルナンドは、デボンに捕まり、頭にくらった鉄拳のせいで若干目から涙が出ていました
「隊長ー、ちょっとしたユーモアじゃないっすか」
「ちょっとじゃないだろう」
「ちぇっ。あーぁ、フォルもいたら爆笑だったのに」
久しぶりのデボンのスパルタ稽古で流れ出る汗を拭っていたシークラントは、二人のやり取りを黙って聞いていました。でも、見知らぬ名前に眉を潜めて問いました
「フォル?」
「あぁ、王子、知らないんだっけ?カシェルク領の護衛できた少年だよ」
「カシェルク領から?」
シークラントは、あの風変わりな令嬢を思いだしました
(あのカシェルク領の?)
「すっげー剣の使い手っすよ。ま、俺にはまだまだ及ばないけど」
「嘘をつくな。俺が見た限りでは同等くらいだったぞ?」
「へぇ…フェルナンドと同等か。それはなかなかやる護衛だな」
「王子!同等じゃないっすよ。俺のが腕一本分上です」
「たいして変わらんだろう」
「変わりますよ〜」