王子様のお妃候補?
そう言った瞬間、涙が出てきたのかメイは、ぐずっと鼻水を啜りました
「…あ、あのね、メイ。そんなことで侍女失格ってのは言い過ぎじゃないかな?」
「そんなこと、ではありませんっ。侍女たるもの誠心誠意、起きた瞬間から寝る瞬間までお仕えするようにと、メルシー様に言われました」
「メルシー?」
「私たちの、侍女頭様です」
「そうなんだ。うーん、でも他の令嬢さんたちがどうかは分からないけど、僕の場合はそこまでしなくていいよ?」
気を遣ったつもりでアリュエインは言ったのに、メイはガックシとまた落ち込んでしまいます
「アリュエイン様に、私は必要ないのですね…」
(なんでそうなる?!)
「いや、だからね、僕は普段から侍女よりは早く起きるし、自分の支度は自分でしてるんだよ。ねぇ、シャナ?」
「えぇ、そうですよ、メイさん。アリュエイン様にそのような侍女のマニュアルなど意味がありません。私も初めはアリュエイン様より早く起きようと躍起になりましたが、このかたは日の出と共に起きるんです。それに、あまり誰かに自分の身の回りを任せたりすることは性に合わないみたいです。だから、メイさんはそんなに落ち込まなくていいんですよ?」
「そうそう。僕は僕でやりたいだけだから、気にしないで?」
にっこり笑うと、メイは一瞬目を見開いてから、戸惑うように小さく頷きました。
「はい…ありがとう…ございます。アリュエイン様、シャナ様」
「私に様なんて付けなくていいですよ」
「で、ですが…」
「あー、もうっ。シャナもメイも堅苦しいなぁ。いいじゃん、シャナにメイで」
「アリュエイン様…いえ、アリー様も言ってることですし、そうしますか。メイでいいかしら?」
「は、はい。シャナ…さん」
あ、と、顔を赤くするメイに、アリュエインとシャナは顔を見合わせて、クスクス笑いました
「しょうがないな、メイは」
「よろしくお願いね、メイ」
「はいっ」