王子様のお妃候補?
王様の優しい瞳に、アリュエインは照れ臭そうに、へへ、と笑いました
「いつもお父様から、お前のいいところはその元気さだって言われていました……たまに、短所だとも言われますけど」
最後に付け加えるように、唇を尖らせて言うアリュエインに王様はまたも笑ってしまいました
「カシェルク領はきっと、いつも賑やかなところなのだろうな」
「はい!皆、働く時はヒーヒー言ってますけど笑顔が絶えたことはありません!」
今はなに一つその光景が見えない、遠い故郷に思いを馳せながらアリュエインが言いました
「皆、本当にいい人たちばかりです…」
「そうか…。私はカシェルクには数十年前に行ったきりだが、一度見てみたいものだな」
「はい、ぜひ遊びにいらして下さい!歓迎しますよ!」
力強く拳を握りながら身を乗り出して言うアリュエインに王様は、本当かね?と、口元を綻ばせました
「はい!」
「では、いつかアリュエイン嬢に案内してもらうとするか」
王様がウンウン、と頷いていると突然、王様の肩を掴む手が現れました
「うおぉ!?」
ビクッと肩を揺らす王様が振り向くとそこにいたのはー…
「ハ、ハルルク…」
「見つけましたよ、王様」
にぃーっこりと、聖人もかくやと言わんばかりの笑顔ー…を浮かべるでもなく、ただただ無表情な王様の第一の側近、ハルルクが立っていました
「ハルルク様?」
アリュエインが、また大物が現れたものだ、と伺っているとハルルクはアリュエインに、小さく頭を下げて挨拶をしました
「おはようございます、カシェルク領のアリュエイン殿」
「おはようございます、ハルルク様」
礼をするやいなや、ハルルクはこっそりと逃げようとしていた王様をむんずと捕まえてしまいました