王子様のお妃候補?
「こんなところでお会いできるとは思いませんでしたよ、陛下」
「う、うむ?そ、そうか…?」
しどろもどろ答える王様の目はアリュエインたちが分かるほど、あちこちさ迷っていました。
「ハルルク様はどうしてこちらへ?」
アリュエインが何の気なしに聞いた質問を、ハルルクは待ってましたと言わんばかりの大仰な口調で言いました 。
「実は、私、朝の会議からどこに〜も見当たらないあるお方を食事の時間を割いて探していたのですよ」
あるお方、の部分で王様がビクンっと肩を揺らすのをアリュエインはしっかりと見てしまい、この状況の意味を察してきました
(はは〜ん、王様……逃げたんだな)
アリュエインや後ろのメイド二人からの視線を感じているのか王様はさらに縮こまるように背中を丸めていきました。
もちろん、その間もハルルクからの”あるお方”の話がやむことはありません
「毎朝毎晩と性懲りもなく、逃げ出すお人でしてね。私が始終目を光らせていないとこれっぽちも仕事をなさろうとしない、ぐーたらなお方でして…」
「は、ハルルク。その”お方”の話はそろそろ切り上げてはどうだ?」
「おや、何故です?私は陛下にその”お方”の非行について嘆願しているのですよ。しっかりと聞いていただかないと…」
と、淡々と”嘆願”を続けるハルルクに王様は、分かった分かった!!と叫ぶと、ふぅ、とため息をつきました
「その嘆願…確かに聞き入れた…」
「そうですか。陛下の耳にお入りになったなら、きっとその”お方”も反省しなさることでしょうね」
「うぅ…」
あからさまに落ち込む王様と、したり顔一つも見せずに鉄面皮を誇るハルルク…
その光景をアリュエインたちはただ、じっと見つめていました
(ハルルク様っておっそろしいなぁ。)
王様に一抹の同情を寄せて、アリュエインは小さく苦笑いをしました