王子様のお妃候補?
それからすぐに人だかりが割れて、円の中から一人の少年が出てきました。
「シャナ!?どうしてここにいるの!?」
心底驚いた。というような顔をして少年はシャナを見つめていました。
「どうして…じゃありません!!アリュエイン様!!」
その少年は、正真正銘の公爵令嬢でありシャナの主のアリュエインでした。
アリュエインはいつものように、動きやすさを重視したオーバーパンツをはき、ぶかぶかのシャツにベストを着て、どこから見ても普通の13〜4歳くらいの少年のような出で立ちでした。
ただ、その手には小柄な身体に合わせた剣を持っていました。
「アリュエイン様!!なぜ、ここにいらっしゃるのですか!私と約束しましたよね!?もう、二度と剣はもたないと!」
シャナは腰に手をあてて、いつものようにアリュエインに説教を始めます。その顔は般若よりも恐ろしい…。とアリュエインは思いました。
シャナはアリュエインより二つ年上の幼なじみなので、二人は侍女と主というよりしっかり者の姉と手がかかる妹。のような関係なのです。
「なぜ、約束を破るのですか!!」
「……す、すみません。」
何も言い返せないアリュエインは、大人しく説教を聞いていました。
この光景もカシェルクでは、いつものことで兵士たちはシャナの怒りが自分たちに降りかからないように、こっそりと解散していきました。
「だいたいアリュエイン様はいつも……クドクド」
止まらないシャナの説教にアリュエインはこっそりため息をついた。
(まさかシャナに見つかるなんてなぁ…。シャナは鍛練場が嫌だから近くにすら寄らないから油断してたよ…。)
「…はぁ」
「何かおっしゃいました?」
目ざとくアリュエインのため息に反応するシャナにアリュエインは慌てて背筋を延ばしました。
「しっかり聞いてます!」
「よろしい。…いいですか、アリュエイン様はこのカシェルクの公爵令嬢であって……クドクド」
(まだ続くのーっ!?)