王子様のお妃候補?

いつまでも続くかと思われていたシャナの説教にアリュエインが辟易(ヘキエキ)していると、そこへ助け舟が現れました。


「シャナ嬢、アリュエイン様に説教するのは構わないけど、何か用事があったんじゃないか?」


それはラジールでした。


ラジールの言葉にシャナはハッと自分が来た理由を思い出したようです。


「そうでしたわ!!すっかり忘れていました!」


やっと止まった説教にアリュエインがホッとしてラジールを見ると、ラジールは片目をつぶりました。


「助かったよ、ラジール」


「そろそろ止めないとアリー様が少し可哀相だったし、シャナ嬢も疲れていたみたいだからね」


ラジールはアリュエインと同じ歳で、二人は剣仲間として友情を結んでいました。
友達として、アリュエインは気配りができ、冷静に物事を見れるラジールが大好きでした。


(ラジールのおかげで助かった…。)


アリュエインが一息ついた瞬間、シャナが慌てたようにアリュエインに自分が来た理由を告げました。


「アリュエイン様!実は、ファルマー様からすぐに執務室へいらっしゃるように。と伝言を預かって参りましたのです。」


「お父様が僕を呼んでいる?」


アリュエインは、首を傾げて不思議そうな顔をしました。


「はい!!今すぐに来るように。…だそうです!」


「急ぎの用事なんて珍しいね…。何だろう?」


アリュエインには父から呼び出される理由がさっぱり思い付きません。

ファルマーが仕事用の執務室にアリュエインを呼ぶ時は”公爵”として話がある時のみです。


実際、以前に一度だけアリュエインはファルマーに執務室に呼び出されました。その時はどこかの家のパーティーに呼ばれたから家の留守をまかせる。という内容でした。


普段からファルマーがアリュエインに”公爵”として何かを言い付けることはありません。
なのに、今日はいつもゆったりしたファルマーが”急ぎ”だというのです。


アリュエインは不思議でなりませんでした。

「…とりあえず父様のもとへ行こう。」


アリュエインは不安な気持ちを持ちつつ、ファルマーのもとへ向かうことにしました。



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