Mad Love
その夜、母の作戦は決行されようとしていた。
知り合いだか何だか知らないけど、物凄く綺麗で可愛らしい女の人が、家庭教師をするにあたっての挨拶に来た。
「こんにちは愛ちゃん、私はあなたのお母さんの同級生で、智美っていいます…あ、トモちゃんでいいよ!」
「はぁ……」
あれ?家庭教師って、男の人の予定じゃなかったっけ?
それならそれで別に嬉しいけど、何かこの人の雰囲気は…教師って感じじゃないような…。
「智美、あんたはマナとじゃれ合いをさせるために呼んだんじゃないわよ…」
私を叱る時と同じ調子で、智美さんを注意するお母さん。
「ご、ごめんねサヨちゃん」
涙目で謝る智美さん…。
「"サヨちゃん"言うなっ!!!」
キレるサヨちゃ…お母さん。
……あれ?何か話しがズレていってるような。
でも、ションボリしている智美さんは、何だか愛らしい感じで、こんな優しそうな人に勉強を教えられるなら、頑張ってテストの高得点を狙ってみようと思う。
「あの、智美さん、これから宜しくお願いします!」
私は礼儀正しくおじぎをした。
「うん、よろしくね…"うちの息子"を」
「…………はぃ?」
なぜそこで息子さん??
「マナ、あんたもしかして智美が家庭教師だと思ったの?」
はい、いかにも……違うの!?
「智美が勉強教えるなんて無理よ、なんならあたしが教えた方がよっぽどマシ」
「サヨちゃんひどぉい、でも本当に私には無理、あまり人に自慢できる成績じゃなかったもの…だから葵(アオイ)に頑張ってもらわなきゃね!」
ちょっと待って下さい、…誰?
葵って誰なの????
ってかやっぱり男!?