Mad Love
その後、智美さんは我が家で夕食を一緒にとり、お母さんと学生時代の話しで盛り上がっていた。

そして家庭教師の話題は、いつの間にか忘れ去られていた…。

私は1人真剣に悩んでいて、美味しい晩ご飯も味がしないほど、気持ちが滅入っている。


「あの、お母さん…」

とりあえず、家庭教師が来るという日付けを確認しておこうと思った…心の準備のために。


「いつ来るの?」

「何が?」

「か、家庭教師の…人」


ドキドキする。

それも胃痛がしてきそうな、嫌な感じの方のドキドキ。


「あー…いつ?智美」

「愛ちゃん早く葵に会いたいの??そうねぇ〜明日からでもいいと思うよ!」


ええっ!?

別に会いたくはないです!!!

明日とか早過ぎやしませんか!!?


「い、いや、明日でなくても…」

「大丈夫よ!!葵も今は暇してるし、今日帰って伝えとくね、明日って!」


「………はい」


そんなに嬉しそうに言われたら、断る術を知らない私は、ただ頷くことしかできない。

私の隣でご飯を食べていた絵里は、家庭教師が男だと再度確認ができたことに満足しているのか、私と目が合う度にニヤニヤしてくる。


それにしても…

「…明日…か……」


食べかけのお皿の上に箸を置き、過去話を再開したお母さん達には気づかれていないようなので、そのまま自室へと戻ることにした。

片付けやら、心なんかの準備をしなくちゃいけないから…。
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