月見山の巫女
「お前さ、俺の名前覚えてる?」
唐突にそう質問され戸惑ったが、彼の名前については校内を歩いていれば誰かが噂している程、彼自身が有名だったため記憶として残っていた。
「…藤堂、皐月?だよね」
思案気に答えた浅香を見て、彼は驚いたようだった。やや目を見張っている。
「…正解。いや、でも驚いた。お前他人のことは一際興味なさそうに見えたからさ。」
「有名だからね、君。」
「有名…俺が?俺よりお前のが注目されてると思うんだけどな。」
注目?
言われたことに戸惑った。自分自身、そう目立つ容姿も行動もしていない。担任に注意されることはしばしばあるが、別段特に注目される程ではない…はずなのだが。
「そんな気にすることもないから。注目されてるとは言ったけど、お前の悪口言ってるとかじゃないからさ。」
そう言って気の抜けたように笑った彼は、開けたままの窓を手早く施錠すると、浅香の方へと再び近づいた。
「まあ、そんな事はおいといて、お前これから時間ある?…無いとは言わせないからな。その為に俺待ってたんだし。」
言うや否や、彼は浅香の鞄を引ったくるようにして掴むと、そのまま教室を出ていった。
唐突にそう質問され戸惑ったが、彼の名前については校内を歩いていれば誰かが噂している程、彼自身が有名だったため記憶として残っていた。
「…藤堂、皐月?だよね」
思案気に答えた浅香を見て、彼は驚いたようだった。やや目を見張っている。
「…正解。いや、でも驚いた。お前他人のことは一際興味なさそうに見えたからさ。」
「有名だからね、君。」
「有名…俺が?俺よりお前のが注目されてると思うんだけどな。」
注目?
言われたことに戸惑った。自分自身、そう目立つ容姿も行動もしていない。担任に注意されることはしばしばあるが、別段特に注目される程ではない…はずなのだが。
「そんな気にすることもないから。注目されてるとは言ったけど、お前の悪口言ってるとかじゃないからさ。」
そう言って気の抜けたように笑った彼は、開けたままの窓を手早く施錠すると、浅香の方へと再び近づいた。
「まあ、そんな事はおいといて、お前これから時間ある?…無いとは言わせないからな。その為に俺待ってたんだし。」
言うや否や、彼は浅香の鞄を引ったくるようにして掴むと、そのまま教室を出ていった。