月見山の巫女
「俺は皐月といても楽しくない。」

暗い瞳を見つめて、はっきりと言い放った。

「皐月と友達になるのは、………無理。」



―――― サァァァ


ゆっくりと立ち上がった。緩やかな風が髪を揺らす。


皐月は何も言い返さない。浅香を静かに見上げている。

「俺さ、嘘つきが嫌いなの。」

視線はもう皐月から離れていた。

視界に映るのは、屋上から見渡すことの出来る町並みだ。後、青空。


(…ここは本当に気持ちがいい。)


浅香は空が好きだ。何処までも続く、大きくて広い空が好き。

空が描くのはいつだって真実だ。時折、雲に覆い隠されてしまうがいつかは晴れ渡る。




「ねぇ、皐月。本当の自分はどこにいるの?」
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