月見山の巫女
無い袖は振れぬ
―――あぁ、疲れた


額の汗を拭いながら、近くのベンチに腰掛けたのは、線の細い少年だ。

そして、彼の隣にはもう一人の少年が、ベンチの半分を陣取っていた。

こちらの少年も、額には汗が浮かんでいた。




――季節は春から夏へと移り変わった。心地よかった風も、今ではこの暑さを増長させる一端でしかない。

現在彼らが座る場所にしたって、太陽の熱で表面温度は普段の何倍にも高まっていた。


…だが、そんな事気にもならない程、今彼ら二人は疲弊していた。



「何処までついてくるんだろうな、あの女。」

「すごい体力だよね。」


一人はうっとうしそうに言い、もう一人は空笑いで返す。

前者を藤堂皐月、後者を佐久間浅香という。



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