月見山の巫女
「ハァ…」


……この溜め息は決して寝てしまった事に対する後悔から出たものではない。

屋上から見渡す夕暮れに圧倒され、思わず息をついてでてしまったのだ。

起きたばかりで寝惚けた思考も、この光景を見て一気に吹き飛ぶ程に、見渡す景色はとても美しいものだった。


――眺めて数分経つと、風が徐々に冷たくなってきていることに気付き、浅香はしぶしぶ重い腰を上げた。

もう暫く眺めていたかったのだが、携帯で時刻を確認すると6時を過ぎていた。

今日は部活動が無い為に、学校が閉まってしまうのが早い。


(…昼休みはここで昼食をとろうかな。)


そんな事を考えながら、誰も居ないだろう教室へと足を進めた。
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