月見山の巫女
1−A と記されている教室が浅香の在席するクラスであり、そこは一続きになった廊下の一番端に位置している。


薄黄色のカーテンが、フワリフワリと揺れていた。



――赤の光を背中に受けつつ、視線は床へと落としどこか思案気だ。

窓際に寄り掛っている少年は、浅香のクラスメイトだった。

下校時刻が近づく学校に、窓も開けたまま一人佇む彼の姿はひどく滑稽に見える。


「遅い。俺がどれだけ待ったと思ってんの?」

ぽつりと一言。
顔を上げた彼が浅香を見てもらした第一声。

「えーっと…、」

「学校中探し回ったんだからな、俺は。お前どこにいたんだよ。」

言葉の割に、彼の纏う雰囲気や口調は穏やかそのものだ。

…どこか浅香に対して呆れているようにも見えるのだが。

「…屋上?」

とりあえず素直に答えてみる。

一拍おいて、彼がため息を吐いたと同時に、「…想定外。」と小さく漏らしたのが聞こえて来た。


寄り掛っていた姿勢を正し、教室のドアを開けたまま立ち止まっていた浅香の前まで近づくクラスメイト。

「今日は何の日か覚えてる?」

その一言で、浅香は大切な事を忘れていたと気付いた。
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